ハッピーエンダー
九月になった。
ある日、水樹さんがそろそろ実家を見てくると言い、二週間ぶりに出掛けていった。その日は私のバイトがあったため、また夜にアパートで落ち合う予定になっていた。
夜、八時半。
いつもバイト先まで迎えに来てくれたり、合鍵を渡していてもアパートの前で待ってくれているのに、今夜はどこにもいなかった。
家に入ったが、やはりいない。実家が長引いているのだろうか。作っておいた夕飯も手をつけていないから、まだ戻っていないはずだ。
荷物を置いて、先にシャワーを浴びる。ジャージになって彼の帰りを待っていると、スマホに着信が。画面には【水樹さん】と映し出されており、私はすぐに出た。
「はい。水樹さん?」
ガサッという乱暴な音が聞こえ、次にホラー映画のようなうめき声。私はもう一度、「水樹さん?」と呼び掛けた。
『テメェふざけんじゃねーぞ!』
……え? 水樹さんじゃない。
女の人の声だ。