ハッピーエンダー

「え、あの」

『うちの水樹になにしやがったんだよこのアバズレが! アイツもう帰って来たくねぇとか言い出しやがったじゃねぇか! テメェだけ番号登録されてっから、どうせウチのをたぶらかしてんだろ!』

嘘……この人、お母さん?

『水樹はなぁ! 父親似だからいい大学出て社長になって、アタシに贅沢させてくれんだよ! テメェなんかにやらねぇから!』

「み、水樹さん、は、どこに……」

『水樹が来ねぇとウチは掃除も洗濯も飯も買ってくるヤツいねぇんだよ! 部屋に男も呼べねぇの! 責任取ってテメェ金持ってこい! 有り金全部だよ! 持ってこねぇならテメェの家族全員地獄に落として殺してやるから!』

スマホを持つ手がカタカタと音を立てながら、私はベッドに膝を折って震え上がっていた。電話から聞こえる声は狂気じみていて、まともに話ができる状態じゃない。どうやらそこに水樹さんはいないらしく、それがせめてもの救いだった。

水樹さん、こんな人のいる場所に、いつも帰っていたの?
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