ハッピーエンダー

「……おかえりなさい」

「どうした。変なポーズして」

彼はクスッと笑みを浮かべ、テーブルに買ってきたスイーツをふたつ出した。「こっちが生クリームで、こっちがチョコ」と上機嫌に説明をしながら、蓋の上にプラスチックのスプーンをそれぞれ置いて、ベッドの上の私にもたれかかった。

「水樹さん……」

「ん? なんだよ」

いつもと変わらない。いつもこうだったのかな。変わり果てたお母さんに責められて、ここへ逃げてきて、それでもつらい気持ちは心に秘めて笑っていたのかな。

「あ、あと俺さ。少し実家に帰る日増やすから。面倒だけど、ホストが来てくれなくなったみたいでご立腹なんだよな、母親」

水樹さんはお母さんに、「もう帰りたくない」と言ったはず。本当は帰りたくないんでしょう。お母さんがそれを許してくれなかっただけで、水樹さんには限界が来ている。

「帰らなくていいと思います」

彼の袖を掴んで、唇を噛んだ。彼は驚いてこちらを見ている。

「え、なに」

「帰らないで水樹さん。ずっとここにいて」
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