ハッピーエンダー
「光莉は綺麗だから、知らなくていい。俺はもう汚れきってる。相手が誰だろうと今さらなにも変わらない。なにも感じないよ」
そんなはずない。一千万を積まれても今まで拒否してきたんでしょう。自分を明け渡さず必死で守ってきた証拠だ。私が彼にとってどんな存在なのかはよくわからない。でも、守ってきた自分を投げ出すことを、なにも感じないと言わせてしまう存在なら、こんな関係は望んでいなかった。
このままそばにいても、私のためなら彼はまた、自分の身を切り売りしようとするのだろうか。傷ついて苦しんで、自分が何者かわからなくなって、痛みもなにも感じなくなるほど。
「……水樹さん。私もう、あなたと一緒にはいられません」
肩を震わせながら告げた言葉に、彼は顔を強張らせた。
「そんなに引いたわけ?」
違う。水樹さんのせいじゃない。私のせいだ。私は昔から、そばにいてくれる人の大切なものを奪うのだ。