溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情


「マッサージです」


亜未は疲れもとれるし、スキンシップにもなる一石二鳥の方法を教えてくれたのだ。


「疲れていると思うので。どうぞそのままで」

「なるほど。そういうことなら。ありがとう。お願いするよ」


吉池さんの言葉に小さく頷き、緊張しながらマッサージを始めていく。

まずは後頭部の髪の生え際。

首の中心にある太い筋肉から指1本分外側にあるくぼみを押していく。


「気持ちいいな」

「眼精疲労に効くツボだそうです。目を閉じていてください。また押しますね」


ゆっくりと押していく。

それから今度は吉池さんの顔の方に回り、思い切って人差し指と親指で眉を挟み、眉間から眉尻へと引き上げるように移動しながらもみほぐす。

こめかみまで流すようにマッサージし、優しく、優しく押していく。


「いい香りがする」


目を閉じたまま、吉池さんが言った。


「少しだけアロマオイルを手に付けているんです」

「へぇ。癒される香りだ」


吐息交じりの声に吉池さんの疲労感を知り、胸がキュウっと締め付けられた。

もっと吉池さんのために出来ることがあればいいのに。

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