溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「ありがとう。おかげで目がすっきりした」
「よかったです。他にも私に出来ることがあれば言ってくださいね」
とは言ってもすぐになにか出来るものではなく、お風呂に入って来ようと立ち上がった。
でも、吉池さんに手を掴まれ、そのままグッと引き寄せられてしまう。
「え?あ、あの」
覆いかぶさるような形になってしまい、動揺して身じろぐ。
でも吉池さんは私の動きを制すかのようにギュッと強く抱き締めた。
「少しの間でいい。このままでいさせてくれ」
耳元で囁かれて、ドキッとして、体が固まる。
「マッサージもいいけど、絵麻を抱き締めるとすごく癒される。ずっとこうしたかった」
「どうして」
そこで口を閉じると、吉池さんが抱き締めていた腕を解き、続きを待つように私の顔を覗き込んできた。
だから思い切って口にする。
「どうして何もしてこなかったんですか?」
「今もそうだが、スキンシップにまだ抵抗があるだろう?」
前に触れられたのは映画を見た日。
その時のことを思い返すとキッチンで後ろから抱きしめられた時、体が固まってしまっていた。
「ごめんなさい。私、慣れていなくて」
「謝る必要はない。スキンシップと言い出したのは俺が焦っただけだから。絵麻は初日に『お手柔らかに』って言っていたのに」
吉池さんはそこで一度区切ると柔らかく微笑み、私を見て続けた。
「あとは引いてみて、絵麻がどういう反応をするのか知りたかった」
「え?」
「マッサージはスキンシップ。触れたいと思ってくれたんだろう?」
ここで意地を張っても意味がない。
小さく頷くと、吉池さんはニコリと微笑み、私の目を真っ直ぐ見つめ、言った。
「キスしてみようか」