溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
湊さんは私が出張に同行しないと返事をした時、顔色ひとつ変えずに、先のことを口にした。
『申し訳ないがこの会えない時間で気持ちを整理しておいてくれ。帰国まで、最長で二週間掛かるかもしれないから』と。
二週間後といえばパーティーの日。
着物のことがあるから、考える時間は確かに必要で、心を決めないといけないのは分かっている。
あの着物は湊さんとの未来が描かれた特別な着物で、袖を通すか通さないか、それが今後どうするかの返事にもなるから。
ただ、同行を断った時、「一緒に来てくれるだけでいいんだ」とか「そばにいたい」「離れたくない」みたいな言葉が欲しくて、でもそれと同時に欲しがるだけじゃダメだって気付いて、今はそれを言えばよかったと後悔している。
「吉池には電話したのか?」
兄に言われて首を振る。
「仕事中だったら困るから」
「じゃあメールしたら?『やっぱり一緒について行けば良かったです』とか『会いたい』とか。少し可愛げのあるところ見せてみろよ。吉池、喜びのあまり、めちゃくちゃ仕事頑張って早く帰って来てくれるかもしれないぞ?」
湊さんはプライベートと仕事をきっちり分けるタイプの人だと思うから、私の言動ひとつでどうこうなるような仕事はしないだろう。
むしろ忙しいから同行してくれなくて良かったとさえ思っているかもしれない。
だからメールはしないと首を横に振ると、兄は首を傾げた。