溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「鈴木には別の子をすぐに紹介したから。ほら、俺のところには縁談話がよく来るだろ?」
それは兄のことを思って親戚やら友達が紹介してくれているだけなのに機転が効くというかなんと言うか。
「ハル兄ってすごいね。湊さんも『ハルには敵わない』って言ってたよ」
「へえ。それは嬉しいな」
兄は本当に嬉しそうな顔をした。
「湊さんのこと、好きなんだね」
「吉池は冷徹とかワンマンって評されることが多いけど、嫌われ役を買って出る強い男だから。八方美人の俺からすればあの強さは憧れるよ。それに真面目だ。忙しいのにも関わらず、わざわざ俺の職場に来て、鈴木に『見合いの予定を急に変更させてしまい申し訳ない』って頭下げて、俺にも『必ず幸せにする。無理を聞いてくれてありがとう』って言いに来たんだから」
知らないところでそんなことが起きていたなんて、驚きで言葉にならない。
そんな私を見て、兄は優しく微笑み、続ける。
「見た目も能力も心意気も完璧。吉池は俺の自慢の友達だ。その友達が絵麻のことを気にかけているのは知っていた。でも、友達と義兄弟になるっていうのは築き上げてきた関係が崩れそうで嫌で、ふたりを引き合わすことは出来なかったんだ」
「今もそう思ってる?」