溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「絵麻!」
名前を呼ぶ声が私の体を動かす。
立ち上がり、湊さんのいる方へと足を向けると、私が一歩踏み出すより早く湊さんが駆け寄り、私の体を抱き寄せた。
「会いたかった」
湊さんの絞り出すような短い一言が私の不安をかき消す。
「私も、会いたかったです」
湊さんの背中に手を回し、ギュッと抱きつくと、湊さんはさらに強く抱き締めてくれた。
でも……
「湊さん、もしかして」
私がそう言うと湊さんは抱き締めていた腕を解き、私を見下ろした。
その顔に手を伸ばし、確認する。
「痩せました?」
「よく気が付きましたね。さすがは恋人」
そう答えた声は湊さんの声とはまるで違う、透き通るような高い女性の声。
湊さん越しに声のした方を見ると、目力のある背の高い細身のパンツスーツがよく似合う綺麗な女性が立っていた。
「えっと」
誰なのか湊さんに視線で訴えると、湊さんが答えるより先に女性が一枚の名刺を差し出してくれた。