溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「秘書をしています、永井と申します」
秘書と聞いてピンと来た。
『すごい美人で頭も切れて湊さんに臆することなく意見する女性』
水島さんが言っていたのはおそらく目の前にいる女性だろう。
「頂戴します」
差し出された名刺を両手で受け取り、それから顔を上げ、肩書はないので名前だけ口にする。
「初めまして。信楽絵麻と申します」
「俺の恋人だ。失礼のないようにしてくれ」
湊さんの言葉を受け、永井さんの目が揺れた。
それは『分かっています』というより傷ついた動きに感じて、ドキッとした。
「信楽さん」
永井さんに呼ばれ、動揺を隠すように「はい」と短く答えると、「いきなりで申し訳ないのですが」と前置いてから湊さんに食事を取るよう言ってもらえないかと言われた。
「食事ですか?え?もしかして全然食べていなかったんですか?!」
驚いて湊さんを見上げると、余計なことを言うなと言わんばかりに永井さんを睨んでいる。
湊さんの不機嫌さがその場を凍りつかせるけど、それどころじゃない。
「どうして食べなかったんですか?忙しかったから?」
「たしかにそれもありますが」
永井さんが湊さんに代わって答えてくれた。
「忙しくしたのも社長自身です。一刻も早く帰国したかったから寝食の時間を惜しみ、会食以外の食事は仕事に専念されて取らなかったんです」