溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「おねえちゃん、なにがおもしろいの?」
声のした方向を探すと、3歳くらいの男の子が私を見上げ、私の手元を真似ていた。
「この手のかたち、なに?」
「これはね、カメラよ。桜が綺麗だったから撮影したの。そうだ。きみの燕尾服姿も素敵だから1枚撮っていい?」
そう言ってカメラを覗くフリをする。
するとノリの良い男の子は腕組みをしてポーズを取った。
「わぁ!カッコいい!そのまま、そのまま。はい、撮るよー。パシャ!うん、最高の1枚が撮れました。はい、どうぞ」
ポラロイドを手渡す真似をすれば、男の子は満面の笑みで架空の写真を受け取ってくれた。
「ありがとう、おねえちゃん。バイバイ」
「バイバイ」
今度は私が男の子の真似をして手を振り返す。
するとまた可愛らしい笑顔が返ってきて、私の口角も自然と上がった。
「お待たせしました」
タイミングよく届いたミルクティーも濃過ぎず、薄過ぎず、私好みの味で、なんとなく今日は良いことが起きる気がした。