溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「恋人は大学生の時にひとりだけ。ですのでお手柔らかにお願いします」
「あぁ…と言いたいところだが、それは無理なお願いだな」
言いながらベッドに腰掛けた吉池さんは私を見上げて続ける。
「見合いの日に話したが、俺は全力できみを口説くつもりだ。後悔したくないからな。お手柔らかになんて悠長なことは言っていられない。ただ、焦って嫌われては元も子もないから加減はするよ」
吉池さんが柔らかく微笑んだ。
その笑顔に胸がドキッと反応した時、スマートフォンが鳴った。
「すまない。仕事の電話だ」
吉池さんの言葉に首を縦に振ればスマートフォンを耳に当て、部屋から出て行った。
残された私は部屋をぐるりと見回す。
白とグレーで統一されたシンプルな寝室はこれから2ヶ月、私と吉池さんの寝室になる。
どんなことが起きるのか。
想像するとドキドキしてしまい、また、想像してしまったことに羞恥心を覚える。
でも胸は高鳴っていた。
「悪い」
吉池さんの声に振り向く。
「電話、もういいんですか?」
「あぁ。だがあまり時間がないんだ。必要なものだけ手渡すからちょっといいか?」
吉池さんはそう言うなりダイニングに戻り、ソファーに腰掛けるよう促してきた。