溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
腰掛けるなり差し出されたのはA4サイズの茶封筒。
「なんですか?」
顔を上げ、首を傾げて見せたところ、吉池さんは開けて見るよう手を差し出してきた。
なんだろう、と思いながら封を開けると中には通帳とクレジットカードが入っていた。
「これは?」
通帳から斜め横に腰かけた吉池さんに視線と疑問を向ける。
「同居している間の費用はすべてそこから賄ってくれ」
たったの2ヶ月。
「食費、光熱費とか、全部折半にしてください」
願い出るも吉池さんは首を横に振る。
「結婚したらお金の管理は任せるつもりなんだ。使い方も知りたいからきみの思うまま使ってくれて構わない。それともその預金額では不足か?」
そこまで言われると見ないわけにはいかなくて、意を決して通帳を開くと、予想をはるかに超える額面に驚きを隠せず絶句してしまった。
「足りないか?」
「とんでもない!」
「なら、さっきも言った通り、ここで生活している間はそのカードを使ってくれ。暗証番号はメールで送る。それと」
次に渡されたのは鍵。
「きみのだ」
「わぁ!ありがとうございます」
一人暮らしをしたことがないから、実家以外の鍵を持つのは初めてで、新鮮だった。
「失くさないようにキーホルダー買わなきゃ」
興奮気味に独り言を口にすると、吉池さんがフッと笑った。
「なんですか?」
笑われたことが心外、というのではなく、なぜ笑われたのか聞くも吉池さんは首を横に振り、立ち上がった。