溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

お見合いの時にすぐに気が付かなかったことを言っているのだとピンときた。

覚えていなかったのは関わりがなかっただけで、兄と比較していたわけでは決してないのに。


「俺はハルみたいに明るくなかったからな。どちらかといえば卑屈で理屈っぽくて」


吉池さんが表情を曇らせ、言葉を重ねる。


「人望がなかった。それは友達も言っていたんじゃないか?」


「それは……」


その通りだとしてもさすがに肯定するのは気が引けて口を閉じると、吉池さんは「フッ」と小さく笑った。


「きみは嘘を吐けないんだな」

「すみません」


小さく頭を下げて謝る。

でも謝らなくていいと言う。


「俺もきみには嘘を吐かないから。お互い正直に言いたいことは言おう」

「わかりました。では早速ですがひとついいですか?質問からですけど」


吉池さんが首を傾げたのを見てから続ける。


「毎日、きちんと3食食べていますか?」

「いや。なかなか時間がなくて食べていない」


やっぱり。

吉池さんの仕事内容は分からないにしても、休みさえほとんどないほど忙しい人だから、食事は疎かになっている気がしたのだ。

私が体調を崩した理由のひとつに食生活が不規則になっていたことがある。

もっとも代わりのいくらでもきく私は体調不良を理由に辞められたけど、吉池さんは違う。


「吉池さんが倒れたら多くの人が困ってしまいます。体が資本です。そのためには食事を大切にしないと。簡単に食べられるもの、今から作るので5分でも時間が空いた時に口に入れて下さい」

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