溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
赤やピンク、白、茶色など多彩な色の糸で編まれた房付きのキーホルダー。

ため息が出るほど美しいキーホルダーはまるで着物の帯締めのようだ。


「呉服店で買ったんですか?」

「よく分かったな。それは帯締めで有名な伊賀組紐で作られたキーホルダーなんだ」


組紐というのは、絹糸を主に金糸・銀糸などを使い伝統的な手法で繊細な美しさを持つ紐にくみ上げられたもので、ストラップやキーホルダーとしても販売されているらしい。


「他も見てみたいな」


美しいキーホルダーを見ながら独り言のように呟くと吉池さんが教えてくれた。


「ビレッジ内にあるテナントの中に呉服店がある。そこで扱っているから見てみるといい」

「お忙しいのに」


キーホルダーを買おうって言っていたのを気にかけて買って来てくれたんだ。


「嬉しい。本当に嬉しいです。なんか私ばっかりいい思いをさせてもらっちゃって申し訳ないくらいです」

「ハハ。そんなことはないから気にするな」


そう言われても、同じように吉池さんにも同棲を提案して良かった、って思って欲しい。 

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