溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

「へ？ってなに？」

「だって『頑張る』なんて言うから。いや、絵麻が『彼と絶対に結婚したいから彼に相応しい女になりたい』って言うなら話は別だぞ。でも父さんはそのままの絵麻で十分だと思う。むしろ『この人が俺の愛する女性だ。文句あるか』くらいな気持ちで絵麻を選んでもらえないならこっちから願い下げだ」

「フフ。なにそれ」


父の言うことは極端だし、娘寄りの、娘可愛さの考え方だと思う。

でも父の言葉は胸に刺さった。


『この人が俺の愛する女性だ。文句あるか』


ありのままを受け入れてくれて、好きな人にそう言われたらどんなに嬉しいだろう。


「お父さんはそうやってお母さんを口説いたの？」


からかい半分で聞くも父は真面目に答えてくれる。


「父さんと母さんは似たもの同士だから。価値観の違いはなかったし、誰かに反対されることも、陰口叩かれることもなかった。あ、でも、向こうのご両親はふたりが一緒になってくれたらいいと思っているそうだよ」

「吉池さんのご両親と話したの？」


言葉尻が気になって口を挟むと父は「あぁ」と肯定した。


「同棲が始まった日だったかな、吉池くんからは直接電話をもらって、ご両親は丁寧に挨拶に来てくれたんだ。『うちの息子が無理言ってすみません』って」


知らなかったけど、誠意を見せてくれた吉池さんの気持ちは素直に嬉しい。


「ただ、やはりうちと吉池家では格が違うんだよな。それはなんとなくお父さんにも分かることで、引け目を感じてしまったよ。だからな、絵麻がもし無理だと思ったら早めに帰って来い。取り返しの付かなくなる前に」

「うん」