溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
吉池さんは私が寝ていることに気が付いたようだ。
それから「フッ」と小さく笑うと、私の頭を撫で、それから頬に唇を当てた。
「おやすみ」
そのまま吉池さんは部屋を後にしたけど、私の頬はみるみるうちに熱を帯びる。
「うわぁぁ」
聞こえないように小さく声を出すも、ドキドキが収まらない。
吉池さんの静かで低く、でも甘い声が耳に、頬には唇の感触が残っている。
「どうした?目の下にクマが出来ているぞ?」
翌朝、吉池さんは私の顔を見るなり、そう言ったけど、クマの原因はあなたです、とは言えず。
笑顔で受け流すも、吉池さんを見ると昨夜のことを思い出し、ドキドキして直視出来ない。
吉池さんの出社が早く、朝食と軽食の支度に追われたので動揺しているのはバレていないけど、ひとりになってもやっぱり落ち着かない。
「仕事しよう」
翻訳作業に没頭すれば気は紛れる。
現実、その通りでパソコンを開き、仕事をしているうちにあっという間にお昼になった。
吉池さん用と合わせて自分用にも作ったお弁当を食べ、また仕事に戻る。
室内が暗くなってきたことに気が付き、時計を見ると16時になろうとしていた。