溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「それにしても混んでるな」
桜の木の下にはレジャーシートを広げ、宴会を楽しんでいる人たちが大勢いる。
並木道にも人は溢れるくらいいて、流れに沿って歩くにしてもゆっくりでしか進めない。
でも初めて見る夜桜に私は心と目を奪われていた。
「綺麗ですね」
「あぁ。だが、上ばかり見ていると危ないぞ」
それもそうだと視線を前に向けた時、フワッと風が吹いた。
「わぁ!綺麗ー!」
桜の花びらが舞い、お花見に来ている人たちから歓声が上がった。
「そういえば」
お見合いの日に見たホテルの庭の立派な桜の木を思い出した。
「吉池さんとお会いした日も風が強くて花びらが舞っていて。その中で新郎新婦が写真を撮っていたんです。幻想的ですっごく綺麗で、思わず手カメラで撮影してたら、男の子に『なにしてるの?』って聞かれて…フフ」
思い出したら口元が緩み、会話は中断。
でも、このシーンを吉池さんは見ていたと言う。
「見ながら『将来子供が出来たら彼女はいい母親になるだろうな』と思ったんだ」
見られていたなんて、気付くことが難しいにしてもなんだか気恥ずかしい。
でもこのタイミングで聞いておきたいことが頭に浮かんだ。
「子供、お好きなんですか?」
「いや。好きではない」