溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
吉池さんの答えを聞いてホッとし、そしてホッとしたことに気付いて、自分が考えている以上に吉池さんに惹かれていることを実感した。
「ただ」
吉池さんの逆説の単語に今度は胸が騒つく。
不安を早く解消したくて続きを急かす。
「ただ、なんですか?」
「子供ができないことだってある。その時、子供を理由に離婚はしたくないんだ」
たしかに吉池さんの言う通りだ。
結婚すれば必ず子供が出来るわけではないし、孫の顔を見せたい、欲しいと思っても出来ないことはある。
昨日の父の言葉がまた思い出された。
『この人が俺の愛する女性だ。文句あるか』
吉池さんが言ってくれたら嬉しいって思ったけど、あれは私にも言えることなのだ。
子供が出来なくても、出来ないことを周りにどう言われようと『この人のことが好きなの。一生添い遂げるって決めたの。文句ある?』と突っぱねられるだけの相手。
「それでも一緒にいたい。そう思える相手と結婚はするべきなんですね」
「そうかもしれないな」
吉池さんは同調してくれた。
それから私を見下ろして言った。
「俺はきみにそう思ってもらえるように努力しよう」
吉池さんの好意ある言葉と笑顔に胸がドキッとした。
「私も」
言いかけてやめた。
まだ言葉に出来るほどの覚悟は出来ていないし、宴会で騒ぐ声にかき消され、花見客の流れに押され、落ち着いて話すことは出来そうになかったから。
早々に帰宅し、夕飯を食べていない吉池さんが食べている間にお風呂を済ませる。