溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
「うーーーん!」
よく寝た。
頭も体もスッキリ…って、あれ?
吉池さんがいない。
「まさかっ!」
寝坊したのかと思い、ベッドから飛び起きて時計を確認すると時刻は6時半を示していた。
体内時計の正確さに驚きつつ、静かに寝室のドアを開けて様子を伺う。
でも様子を伺うまでもなく、キッチンから漂ってくる出汁のいい匂いで、吉池さんが朝食を準備してくれていることが分かった。
急いでトイレ、洗面、着替えを済ませてキッチンへと入る。
「おはようございます」
挨拶をするとワイシャツの上にエプロンを付けた吉池さんが笑顔で迎えてくれた。
「おはよう。もう少し寝ていても良かったのに」
「いえ。そういうわけには。朝食作るの手伝います」
腕捲りをしながら吉池さんの方へと回り込む。
でも止められてしまった。
「もう出来たから大丈夫だ。きみは座って」
キッチンの様子が気になったけど、言われるまま腰掛けると旅館の朝食を思わせるような和食がダイニングテーブルに並べられていく。
「美味しそう!お料理、得意なんですね」
「得意かどうかは味を見てから判断してくれ」
見た目でおおよその予想は付くけど、吉池さんの言い分も一理ある。
吉池さんと一緒に彼の手料理をいただく。
「うん。やっぱりお料理得意ですよね。どれもとても美味しいです」
「それはよかった」
「でも…フフ。見ちゃったんですよね」
キッチンの方に視線を向けると吉池さんが大袈裟なくらい、俯いた。
「見られたか」
「はい。見ちゃいました」