溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情
そうは言っても吉池さんは納得してくれていない様子で、私の隣に立ち、手を取った。
「いや、あのっ!手なんて繋いでいたらもし社員の方やお知り合いに見られた時、仕事の買い物だって言えなくなっちゃいます」
「なんだ。そんなことを気にしていたのか」
吉池さんは呆れたように眉根を寄せて微笑むと歩きながら言った。
「きみのお弁当のおかげで、もうすでに社内では俺に恋人がいると噂になっている。だから今更手を繋いでいるのを見られたところでどうってことはない」
やはりお弁当が噂の種になったようだ。
父と話した後にでも吉池さんにお弁当のことを話してどうするか聞くべきだったのに、勝手に自己完結して、確認を怠ってしまった。
「すみません。ご迷惑をお掛けして」
「迷惑?なぜ?謝る必要などないが?」
「だって、噂されるなんて気持ちのいいものではないですよね?それに私、噂になることを分かっていたんです。あ、いえ、分かったのは軽食を持って行ってもらったあとなので、恋人がいるアピールをしたいとか、匂わせとか、そういう確信犯的な気持ちでお弁当を提案したわけではないんですけど」
どう説明したらいいのか分からなくてしどろもどろになる。