溺愛確定　冷徹御曹司とのお見合い事情
そんな私に対して吉池さんは冷静に答えてくれた。


「わかっている。きみは俺の体を心配してくれたんだろう？ただ本音を言えば恋人アピールの方が嬉しかったな」

「え？」


予想外の答えに思わず隣を見上げると、吉池さんは私を見下ろし、いたずら好きの子供がするように意地悪く微笑んで言った。


「今度はお弁当を会社に届けてもらおうか」

「それはさすがに」


好奇の目に晒されることは明らかだし、吉池さんが幻滅されかねない。


「後にも引けなくなりますから」


俯き加減で答えると吉池さんは私の不安を吹き飛ばすかのように声に出して笑った。


「ハハ。それはいい。ならやはり届けてもらおう。後に引かせないために。外堀から埋めていくよ」

「お気持ちは嬉しいのですが」


私はきっと社員の方々の視線に耐えられない。

自信はないし、堂々としてもいられない。

なにより何を言われても突っぱねられるだけの強い心がまだ備わっていないのだから。

笑顔すら返せないまま、俯き吉池さんに付いていくと、一軒の赴きある店の前で立ち止まった。

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