溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情


「ここは、呉服屋さんですよね?」

「あぁ。あ、すみません。社長は?」


吉池さんが年配の女性店員さんに声をかけた。

店員さんがこちらを振り向く前に手を離す。


「あら、吉池様でしたか。こんばんは。社長は奥にいますので今、呼んできますね。店内をご覧になってお待ちください」


丁寧に頭を下げた店員さんは店舗の裏手へと回って行った。

それを見届けてからグルリと店内を見回す。


「あ」


組紐のキーホルダーが目に留まった。

もしかしてこのお店に連れてきてくれたのは私が他も見たいと言っていたのを覚えていてくれて連れて来てくれたのかもしれない。

桜の時と言い、本当に些細なことでも覚えていてくれるから。

でも、そう思ったのは私の自意識過剰な思い込みで、目的は違った。

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