溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

肩を竦めて大袈裟に首を横に振った水島さんは、私を見て言った。


「俺はね、着付師の中でもちょっとした有名人なんだ。わざわざ俺に着付けてほしいって頼みにくる有名人が後を絶たないくらいに。それなのに俺ではなく同性を、だなんて。まったく、愛されてるね、絵麻ちゃんは」

「いいから早くしてくれ」


吉池さんに急かされ、水島さんが「はいはい」と言いながら店頭の方へと姿を消していた年配の女性店員さんを連れて来てくれた。


「よろしくお願いします」


吉池さんが店員さんに声を掛けると、店員さんは丁寧にお辞儀で応え、私を試着室へと案内してくれた。


「下着はそのままで構いませんので、脱いだお洋服はこちらにお入れください」


籠を用意してくれた店員さんに正直に言う。


「あの。すみません。私、買う気は……」

「大丈夫ですよ。お気になさらず。髪も結い上げますからアクセサリーも外しておいてくださいね」


< 83 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop