溺愛確定 冷徹御曹司とのお見合い事情

店員さんは柔らかな笑顔でそう言うと着付けの準備をし始めた。

後に引けなくなってしまい、「着るだけ。着るだけ」と自分に言い聞かせ、服を脱ぎ、身を任せ、着付け、髪を結ってもらう。

店員さんは実に手際よく、ものの３０分で仕上げてくれた。


「どうぞ、こちらへ」


下駄を履くと店員さんは吉池さんの待つ先ほどの部屋へ案内してくれた。

それに従って出て行くと足音に気付いたふたりが同時に振り返った。


「おぉ！似合う似合う！」


拍手をして褒めてくれたのは水島さん。

吉池さんの方を見るとその場で固まっている。


「あの」


様子を伺うように聞くと、吉池さんがゆっくりと近付き、視線を上下に動かしてから目を見て言った。


「すごく綺麗だ。言葉を失うほどに」


キザなセリフに私は赤面、水島さんはプッと吹き出した。

でも吉池さんは気にする素振りも見せず、お財布からカードを取り出した。