通り雨の天使
1.通り雨と彼女
四月も半ば、桜の季節も過ぎて公園横の通り道はピンク色に染まる。
ふと空を見上げると、どんより重たい雲が頭上に立ちこめていた。
「降りそうだな・・・」
そう思い、ほんの少し足早に家路を急いでいると、ポツリ、と鼻先に滴が落ちた。
それはあっという間に激しい雨に変わり、書店の袋を頭上にかざしたがどうにも濡れることは避けられなかった。
アパートまで残り数百メートルのところで古い商店街のアーケードに駆け込んだ。
また空を見上げると、少し先には青空が見えている。
数分で流れてくれそうな雨雲をぼんやり眺めていると、自分よりいくつか若いと思われる女性がアーケードを出る手前で「困ったな」というような顔をした。見るところ、彼女も傘を持っていない様子だ。
彼女は自分から少し距離をとった位置で立ち止まり、スマートフォンを取り出した。
「今、雨降っちゃってて・・・。うん、大丈夫。すぐ止むと思うから、ちょっと待ってから帰るね。」
そう言って電話を切り、彼女もまた重たそうな曇り空の向こうに見えている青空をぼんやりと眺めた。
数秒の沈黙の後、彼女がこちらに気づき、少し視線が重なった。
沈黙を貫く気まずさからか、
「雨、急に降っちゃいましたね」と、俺。
「そうですね~。傘持ってきてないや~」と、笑う彼女。
また少しの沈黙の後、彼女は「もうすぐ止みそうですね。」と付け加えてまた笑って空を見た。
「天気予報、晴れでしたもんね。家近いんで、まさか雨降るとは…」
何気なく話を振った俺に彼女は
「私も、すぐそこのアパートに住んでるんですけど…。こんな近くで足止めくらっちゃいました。」
と答えた。
間もなくして雨は上がり、