飼い犬は猛犬でした。


 そんな完璧に見える彼だけど、少し様子がおかしかった。


 頬を人差し指でポリポリと掻き、何か歯切れの悪いような表情をしている。


 そう、何か言いたそうな……


「あの……」
「はい……」


 さっきからこの繰り返し。
 続く言葉は一向に出てこない。


 わたし、助けて貰っておいて失礼な事でもしちゃったかな……と不安になる。




 そして彼は「……よし」と呟くと、大きく深呼吸をして再び口を開いた。






「ずっと前から好きでした。付き合ってください」





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