飼い犬は猛犬でした。
「あの、なんて呼んだらいいかな……?」
「涼輔って呼んでください」
「じゃあ……涼輔、くん」
男子を下の名前で呼んだのも初めて、こんなにドキドキするなんて知らなかった。
名前を呼んだだけで手で顔を隠して真っ赤になる涼輔くん。
わたしもつられて真っ赤になってしまう。
涼輔くん、表情がコロコロ変わって、犬みたいでかわいい。
「でも大型犬……かな」
「え?」
あっ、しまった……つい口に出してしまった……
「涼輔くん犬みたいだなぁって思って」
「なら俺は先輩の犬になりますよ」
涼輔くんのキリッとした目で真っ直ぐ見つめられると、時が止まったように感じる。
学校の女の子たちが涼輔くんに釘付けになる気持ち、だんだん分かってきた。
こんな風に真っ直ぐ見つめられたら好きになっちゃうのかな……
でも、涼輔くんを騙すようなことはできない……今のわたしは偽物だもん。
本当のわたしは、一等星なんかじゃない。暗くて笑顔が下手で……なにも取り柄がない名前もつけてもらえない星。