飼い犬は猛犬でした。


「はぁ……」
「ちょっと〜どうしたんですか? 今日ため息ばっかりで先輩らしくないですよ〜」

 後輩ちゃんは痺れを切らしたようにそう言った。


 あれ、わたしそんなにため息付いてたかな……? バイト中なんだし切り替えなくちゃ……今は別のわたしになりきるんだ。


 でも、切り替えるも何も……あんな事があった後だし、そう簡単に忘れることなんてできない。

 涼輔くんがわたしだけに優しいなんて、いつから勘違いしてたんだろう。そんな訳ないのに。


 だけど……わたしだけにだったら……



 ……っ! これってもしかして……ヤキモチなのかな……


「彼氏さんの事ですか? 上手くいってそうに見えましたけど」
「へ?! か、彼氏……?」
「はい、昨日来てた人。違うんですか? めっちゃ親しげだったから彼氏さんかと……」
「違う……」


 涼輔くんのこと、彼氏だと思われてたんだ……


「……好きなんですか?」
「え……」
「違うって、すごく残念そうな表情してたから……」


 わたし、残念そうな表情なんて……
 

 全然そんなわけないのに。


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