飼い犬は猛犬でした。


 わたし、真行寺(しんぎょうじ) 涼香(すずか)は、自分で言うのもなんだけど成績は常にトップを飾り、学級委員長を務め、先生からも期待されている。



 ――でも、そんなわたしにも、人に言えない秘密はある。



「ふぅ……怪しまれるところだった……」




 そしてわたしは、いわゆる繁華街と呼ばれている場所に足を運ぶ。




「あ、涼香さんお疲れさまです!」



 そう言ってわたしの元へ駆け寄り頭を下げたのは、先日入ったばかりのバイトさん。

 礼儀正しくて可愛いんだけど、すごく気が弱い子。


「お疲れさま、しばらく更衣室にいるね」


 ふわふわ可愛く見えるように、ピンクを基調にしたモテメイクをして


 いつも”眠そう”と言われる目を、ぱっちり大きめのタレ目に。

 そして、我ながら自慢の黒のロングストレートヘアも、きっちり結んでピンクベージュのウイッグを被り、ハーフツインテールに整える。




 最後に、ヒラヒラのミニ丈メイドドレスに身を包む……



「よし、完成」


 
 ――これでわたしが完成する。



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