飼い犬は猛犬でした。
「ちょっとアンタ、いつまで涼輔くんに触れてんのよ!」
女子のうちの一人がわたしの肩を強く掴む。
「いた……っ、ちょ、やめ…「何してんだよ! 離せ!!」
涼輔くんは今まで聞いたことないほど大きな声で、その女子の手を跳ね除ける。
「あっ、涼輔くん……ごめ……」
「うるせぇよ、消えろ」
冷たくそう言い放ち、睨みつけられた女子は泣きながら姿を消した。
「先輩、ついてきてください」
この凍りついた空気の中、嫌だとは言えず、わたしは涼輔くんに連れられるまま。
人が沢山いる廊下を強引に抜け、階段の踊り場につくと、涼輔くんは立ち止まった。
「……大丈夫っすか、すみません俺のせいで……」
さっきの表情とは変わって、申し訳なさそうに頭を下げる涼輔くん。
「わたしは大丈夫……だけど、こちらこそごめんね」
「え、なんで先輩が謝るんすか……」
「わたしのせいでファンが何人か減っちゃうかも……」
涼輔くんの人気に傷が付いちゃうかもしれない……それって本当に申し訳ない事だと思うから。
「ファンなんて……何人いても嬉しくないんすよ……」
「良くないよ、わたしの友達だって……!」
「そんなのどうだっていいんスよ」