飼い犬は猛犬でした。
「俺、天音さんが好きです。付き合って下さい」
涼輔くんはわたしを壁に追いやると、真剣な表情でそう言った。
もう分からない、こんなのやだ……信じられない、みんなに優しくて誰にでもキスして……そんな涼輔くんとは怖くて付き合えない……。
それなのに「好き」の一言で胸が締め付けられるほど苦しくなる。
涼輔くんの優しさも、キスも、甘い言葉も……全部本当は嫌じゃないから困る。
「やだ……やだよ」
「何でですか……俺の気持ち、まだ伝わんないですか?」
「分かんないよ……だって、こんなの皆に言ってるんでしょ……?!」
わたしが投げやりにそう言うと、涼輔くんは分かりやすくムッとした。
「それ、本気で言ってるんですか? 本気で……自覚してないんですか?」
だって、本当にそうなんだもん……本当に誰だっていいんでしょ?