飼い犬は猛犬でした。


「こんな風に勘違いされるなら、もっと早くこうしときゃよかった……」


 涼輔くんはわたしの頬に手を添える。
 真っ直ぐなその瞳は目をそらすことを許してはくれない。


 そして、涼輔くんの唇がゆっくりと近づいてくる。


「やっ……! やめっ……」


 わたしは顔を逸らし、抵抗する。

「キスッ、皆に……してる、わたし知ってる! こんなのやだ……っ」


「違う……俺は天音さん以外とキスしたいなんて思わない、こんなに好きなのに何で信じてくれないんすか、俺……本当に他のやつに興味ないんすよ……」
「うそ……」

「嘘じゃないです、今日だって……本当はキスするつもりなんて無かった。いつも俺ばっかドキドキさせられてたから、ほんの少しからかうつもりだったんすよ……でも先輩があんな顔するから……俺、止めらんなくなって……」
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