飼い犬は猛犬でした。

「これ、お水……飲んで」


 メイドさんから手渡された水を1口含むと、少しだけ吐き気が落ち着いたような気がした。

「学生だよね? なんでお酒なんて飲んだのか、聞かないけど……もう飲んじゃダメだよ?」
「あー……はい」
「あっ、じっとして……?」


 メイドさんはそう言うと、俺の頬に手を添えた。


「傷、ちゃんと治してね……?」


 貼ってくれた絆創膏越しに感じる優しいての感触と、メイドさんの微笑み。


 ……やべぇ、好きだ……


 俺が落ちるのには十分すぎた。


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