飼い犬は猛犬でした。

 * * *


 放課後、教室を出ようとしたその瞬間、またしても有馬くんに呼び止められた。


「あのさ、少し時間ちょうだい」


 特に予定も無かったわたしは頷いた後、有馬くんと裏庭へと向かった。


 ……一体なんだろう、日直の仕事はもう無いはずなのに……

 有馬くんのメガネの奥にある瞳はキョロキョロと泳いでいる。

 よし、どうしたのか聞こう、そう口を開いた瞬間……




「好き……だ」


 突然聞こえてきた言葉、時が止まったように感じた。


「え……」
「真行寺の、他の女子と少し違ってしっかりしてるとこ……優しいとこが好きなんだ……俺と付き合ってくれないか?」


 好き……ってわたしのこと、だよね……? どうしてそんな突然、わたしは有馬くんとほとんど関わりがなかったはず……


「あの、わたし……」

 有馬くんのこと、何も知らない……でも、なんて言えばいいか分からない……

 例えわたしは有馬くんの事を沢山知ったとしても…………


「…………っ」
「どうしたんだよ……泣いてるのか……?」


 こんな時に、こんな時になって気付くなんて……本当にわたしは馬鹿だ……



 他の人と付き合うなんて1ミリも考えられなかった、今更気付いたって遅いのに……わたしはどうしようもなく



 ――涼輔くんの事が好きなんだ……






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