飼い犬は猛犬でした。
わたしの事を真っ直ぐな瞳で見つめながら好きという涼輔くんが好き。
顔を真っ赤にしながら”可愛い”と言ってくれる涼輔くんが好き。
壊れ物を扱うように、優しく、そっと触れてくれる涼輔くんが好き……
でも、もうその”好き”の対象はわたしじゃないんだ……
「ごめん、なさい……」
「……俺こそいきなりこんな事言ってごめん、でも……しばらく好きでいさせて」
「うん、ありがと……」
わたしはその場を立ち去った。
その時、わたし達とは別の足音が聞こえたことには気付かずに。