飼い犬は猛犬でした。


 今日も涼輔くんに会わないように、こっそりと隠れながら食堂までの廊下を歩く。


「あれ、真行寺何してんの?」

 後ろから声をかけられて振り返ると、有馬くんが居た。
 そりゃそうか、こそこそと壁に隠れながら歩いているなんて不審過ぎる。

「有馬? 涼香と話す仲だったっけ?」
「ああ、俺昨日真行寺に告白したんだ」
「はぁ?!」

 ちょ、有馬くん?! 何言ってんの……
 

「ちょっと! 涼香! あんた早く有馬と付き合いなさいよ!!」


 イオがキラキラと目を輝かせながらそう言い終えた瞬間、次は青白い顔で一点を見つめ始めた。

 ……? イオ……?

 わたしの後ろに何が……




「へぇ……先輩、告白されたんすか」



 
 ――なんで……?
 振り返らなくても分かる。声を聞くだけで泣きそうになる、もう、どうすればいいんだろう……

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