飼い犬は猛犬でした。
どうしてこんな風になってしまったんだろう。
わたしがこの気持ちに気付くのが遅すぎたせいなんだけど……
さっきのわたしの余計な一言のせいで……涼輔くんとは余計に顔合わせずらくなった。
泣きながら廊下を走り、いつもの中庭へと向かっていると、聞き慣れた声がした。
「先輩! お願いですから止まってください、俺の話を聞いてくださいよ!」
……涼輔くん? どうして、追いかけて来たの……?
もしかしてわたしの余計な一言に怒って追いかけてきたの……?
どうしよう、逃げなきゃ……
そう思い全力で逃げるも、涼輔くんの足の速さには到底かなうはずもなく……
「俺から、逃げないでください……」
少し悲しそうな表情の涼輔くんに腕を掴まれてしまった。