飼い犬は猛犬でした。


 どうしてこんな風になってしまったんだろう。

 わたしがこの気持ちに気付くのが遅すぎたせいなんだけど……


 さっきのわたしの余計な一言のせいで……涼輔くんとは余計に顔合わせずらくなった。


 泣きながら廊下を走り、いつもの中庭へと向かっていると、聞き慣れた声がした。


「先輩! お願いですから止まってください、俺の話を聞いてくださいよ!」


 ……涼輔くん? どうして、追いかけて来たの……?

 もしかしてわたしの余計な一言に怒って追いかけてきたの……?

 どうしよう、逃げなきゃ……



 そう思い全力で逃げるも、涼輔くんの足の速さには到底かなうはずもなく……


「俺から、逃げないでください……」


 少し悲しそうな表情の涼輔くんに腕を掴まれてしまった。

< 65 / 96 >

この作品をシェア

pagetop