飼い犬は猛犬でした。



「まず結論から言うと、俺に彼女なんて居ないっす」
「え……佐々木さんとはもう別れたの……? 噂で彼女がいるって……」
「アイツとはそういうんじゃないっす。噂は……」

 そして、丁寧に、ゆっくりと説明をしてくれた。

 涼輔くんは「彼女がいるから」と断れば、告白してくる女子たちもちゃんと諦めてくれるだろう。今までは諦めようが諦めなかろうがどうでも良かったけど、しっかり断ることにした。

 ……そう考えて嘘をついた、と。


 涼輔くんはものすごく真剣な目をしていて、わたしを真っ直ぐに見つめながら一言一言しっかりと説明してくれた。


 涼輔くんの言葉が全て本当なんだと分かり、わたしは言葉を失う。


 彼女なんて居なかったんだ……
 それなのにわたしは勝手に勘違いして、涼輔くんに酷いこと言ったり、逃げたりして……本当に最低だ……


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