飼い犬は猛犬でした。

 ここで、涼輔くんが好きだから付き合わないと打ち明けることなんて……わたしにはできるわけが無い。

 涼輔くんがどんな顔をするのか、知るのが怖い……。

「俺はずっとずっと前から先輩の事が好きだったんすよ?! それをそんなパッと出の奴に易々と渡すわけないだろ?!」
「え……?」


「俺だけ、好きになってください……誰にも渡したくない」


 真っ直ぐとわたしを捕らえる涼輔くんの眼差し。
 それって……


 ――今もまだ、わたしのことが好きって……こと……?


 ねぇ、わたしは自惚れてもいいの?
 この気持ち、まだ手遅れじゃないんだよね……?

 それに気付いた瞬間、涙が溢れてくるのが分かった。

 こんなの、涼輔くんを好きだって言ってるのと同じだ。


 わたしは途端恥ずかしくなって必死に涙を隠そうと顔を背ける。


「っ……! 先輩、隠さないで……」
「やだ……見ないで……!」

 恥ずかしくて顔を隠そうとするわたしを、涼輔くんは少し強引に抱きしめた。


「俺と付き合って。そうじゃないと、離さないっすよ」

「……ッ!」

「ホントは、とっくに俺に惚れてるんすよね……? 」
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