飼い犬は猛犬でした。


 もう無理、そう思った瞬間……

「おい! お前なにやってんだよ!」


 聞き慣れた声が聞こえてきて、私は顔を上げる。

 息を切らしながらこちらへと向かってくる涼輔くん。
 目の前で立ち止まり、わたしを強引に抱き寄せた。

「この先輩俺のだから手出すなよ」


 しかめっ面で堂々と2人に宣言する涼輔くん。なんだか子供みたいで可愛い。


「驚いたな……涼輔って女に興味あったんだね」

 優しい方の人は目を見開き、わたしと涼輔くんの事を交互に見ながらそう呟いた。


「確かにあんな大勢から言い寄られて告られてるっつーのに、興味ナシだったもんな!」

「うるせーよお前ら……」

 涼輔くんは顔を真っ赤にしてそう言い捨てた。


「えっと……お2人は涼輔くんの友達なの……?」

「ああ、この生意気な奴が廣谷(ひろたに)蓮翔(れんと)、んでこいつが(ひびき)颯太(そうた)っす」

 廣谷くんと響くん、か……。

< 74 / 96 >

この作品をシェア

pagetop