飼い犬は猛犬でした。



 その彼は、勢い良くサングラス男の顔面を殴り飛ばした。


 一瞬の事で何が起こったか分からなかったわたしは、ただ呆然とその光景を見続けることしか出来なかった。




「この人、俺の好きな人なんで……手ェ出さないでくださいよ?」




 彼はそう言って、サングラス男を突き飛ばした。




 ――だ、誰……?
 好きな人? え……?




「……え? お、おい!」


 金髪と赤髪が倒れて伸びたサングラス男に駆け寄った時



 彼は手を優しくとった。



「逃げるっすよ!」




 そしてイタズラっぽく、だけど優しく微笑んだ。


< 8 / 96 >

この作品をシェア

pagetop