飼い犬は猛犬でした。

 な、何あれ……
 すごく怖かった……

「ねぇねぇねぇ、誰よあれ! 涼輔くん程とは言えないけどかっこいい! 笑顔が素敵で頭が良さそうで……」

 わたしとの会話が聞こえてなかったイオは、1人でうっとりしていた。


 わたしはもちろんそれどころではない。
 響くんの言葉が頭から離れない。

 わたしと涼輔くんが付き合っていることをよく思っていない事だけは理解出来た。


 そりゃそうだよね……完璧と言っていいほどの人気者の涼輔くんと、なんの取り柄もないわたしが……そんなの物語の世界だけでしか許されないはずなのに……。


「あの人のファンになろうかなぁ……」
「どして……? そんなに好みだったの?」
「涼輔くんには彼女出来ちゃったからね! 彼女いるアイドルは推せないのと一緒なのよ!」

 イオは嫌味っぽくわたしの方を見ながらそう言った。

 イオが響くんを、かぁ……

 さっきの事があって、すっごく複雑だ……

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