飼い犬は猛犬でした。


「先輩のメイド姿、すっげー好きなんすけど、他の男にジロジロ見られたれすんの、ヤダなぁ……」

 涼輔くんがムスッとして呟く。
 少し心配性すぎるような気が……
 わたしがジロジロ見られた試しなんてないし……どちらかというと注目を常にあつめているのは涼輔くんの方だ。


「でも、今は涼輔くんが彼氏だから大丈夫だよ……だって、何かあったらすぐに助けてくれるでしょ……?」

 わたしの言葉に、嬉しそうな表情を見せる涼輔くん。彼にしっぽが生えていたら、全力でブンブンさせているだろうと言わんばかりの喜びよう。

「嬉しいっす、俺……先輩に頼りにされてたんスね……!」
「ふふ、もちろんだよ」

 うん、やっぱり犬みたいで可愛い……
 耳としっぽが生えてるみたい。

 でも、たまに狼みたいな時もある。


「えっと……ここで大丈夫、送ってくれてありがとう」
「じゃあ……バイト頑張ってくださいっス。また明日会いましょう!」

 涼輔くんはニカッと笑って手を振ってくれた。

 ……その無邪気な笑顔に癒される。

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