勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「えっと、その……」




これまでの事情を、ざっくりと説明してみたところ。




「つまり、お姉さんの許嫁の九条さんと彩梅が、



形だけつきあうことになったと」




「う、うん」




「で、彩梅は一緒にいるうちに、



お見合い相手の超ハイスペックイケメンのことを



好きになってしまったと」




「う、うん」




……超ハイスペックイケメン?




「ついでに、この2週間、



そのひとからの連絡が途絶えて、



がっくり落ち込んでいます、と」




「はい、その通りです……」




九条さんと連絡が取れないまま2週間が過ぎていた。




「婚約破棄っていうのは、決定事項なの?」




花江ちゃんにたずねられて、こくんとうなずく。




「おじいちゃん達への建前上、



つきあってることにしてるだけなの」




「でもさ、一緒にいるうちに、



相手に恋愛感情が育つことはあると思うよ?」




「そうだよ、彩梅。あんた自覚ないけど、



かなりの美少女だからね?」




そんな夢みたいなことが起こってくれたらいいのだけど、



現実はなかなか厳しい。




「高校生ですって知らせた時点で、終了してるんだ。



『さすがに高校生とは……』って青ざめてた」




「そっか……」




九条さんの冗談もすぐ真に受けちゃうし、



呆れられて、笑われてばかり。




「ふたりでいるときの九条さんは、どんな感じなの?」




「愛犬のコタロウくんと似てるって」




「は?」




「……愛犬?」




首を傾げるみんなに、大きくうなづく。




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