勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
久しぶりの九条さんの手のひらに、



一気に体温が上がる。




「これから資料のことで、



教授のところに行かなきゃいけないんだよ。



彩梅の友達、あとどのくらいかかんの?」




「すぐ戻るって言ってたので、



そろそろ帰って来ると思います」




「それじゃ、ここじゃなくて奥のベンチに座ってろよ。



この場所、ものすごく目立つから」




ちらりと九条さんを見つめるて、下を向く。




もうドキドキしすぎて、苦しい。




だって、二週間ぶりの九条さん。




すると九条さんに手首をつかまれて、



建物のかげに置かれたベンチに移動させられた。




ぎゅぎゅっと手首を握られて、



すぐ目の前には九条さんがいて、



もう心臓の鼓動が大変なことに!




けれど、九条さんはいつも通り。




平然としている。




この二週間、九条さんと連絡が取れなくて



私はすごく寂しかったんだけど、



九条さんにとっては、



別にたいしたことじゃなかったんだろうな……




大学のレポートとか研究で、忙しかったのかもしれない。




九条さんとの温度差を肌で感じて、



さらにドーンと落ち込んだところで、



強い視線を感じて顔を上げる。




鋭い視線を向けているのは、



九条さんと親しそうにしていたあの女の人。




じっと訝し気に見つめられて、体を縮める。




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