勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「ごめんな、君のお母さんが、
君のことを『あやめ』って呼ぶのを聞いちゃったんだ」
な、まさか、
お姉ちゃんじゃないことに、気づいていたなんて!
さーっと血の気が引いていく。
……でも、今更後悔しても遅すぎる。
まっすぐに九条さんを見つめると、
大きく息を吸って深く頭を下げた。
「大切な席なのに、
嘘をついて、騙すようなことをしてしまって
ごめんなさいっ。
西園寺真桜の妹の、彩梅(あやめ)…です」
なんとか声をしぼりだす。
「姉が来れなくなってしまって、それで急遽、私が……。
その、本当に、申し訳ありませんでした」
「君が悪いわけじゃないだろ」
「でも……」
「家同士が決めたことで俺たちのこと振り回すとか、
ホント勘弁してほしいよな」
おそるおそる顔をあげると、
九条さんの温かな眼差しに包まれる。
九条さん、怒ってないのかな……?
「それで、お姉さんの真桜さんは?」
「……アメリカの研究所に、行きました」
「なるほど、逃げちゃったんだ」
春の風に溶け込むような柔らかな声。
なんて優しい話し方をするんだろう。
そんな九条さんに、ちょっとだけ安心して本音をぽつり。
「お父さん、お姉ちゃんのこと連れ戻してでも
お見合いさせるって、意地になってたから……」
「それで代わりにキミが来てくれたんだ」
「本当に、ごめんなさいっ」
もう一度、深く頭をさげた。
「謝らなくていいよ。
キミが悪いわけじゃないんだし。
それにお見合いの間じゅうびくびくしてて、
小動物みたいでなんだか可愛かったよ」
……か、可愛いかった?
出会ったばかりでこんなことが言えてしまうなんて、
大人の男のひとって恐ろしい!
君のことを『あやめ』って呼ぶのを聞いちゃったんだ」
な、まさか、
お姉ちゃんじゃないことに、気づいていたなんて!
さーっと血の気が引いていく。
……でも、今更後悔しても遅すぎる。
まっすぐに九条さんを見つめると、
大きく息を吸って深く頭を下げた。
「大切な席なのに、
嘘をついて、騙すようなことをしてしまって
ごめんなさいっ。
西園寺真桜の妹の、彩梅(あやめ)…です」
なんとか声をしぼりだす。
「姉が来れなくなってしまって、それで急遽、私が……。
その、本当に、申し訳ありませんでした」
「君が悪いわけじゃないだろ」
「でも……」
「家同士が決めたことで俺たちのこと振り回すとか、
ホント勘弁してほしいよな」
おそるおそる顔をあげると、
九条さんの温かな眼差しに包まれる。
九条さん、怒ってないのかな……?
「それで、お姉さんの真桜さんは?」
「……アメリカの研究所に、行きました」
「なるほど、逃げちゃったんだ」
春の風に溶け込むような柔らかな声。
なんて優しい話し方をするんだろう。
そんな九条さんに、ちょっとだけ安心して本音をぽつり。
「お父さん、お姉ちゃんのこと連れ戻してでも
お見合いさせるって、意地になってたから……」
「それで代わりにキミが来てくれたんだ」
「本当に、ごめんなさいっ」
もう一度、深く頭をさげた。
「謝らなくていいよ。
キミが悪いわけじゃないんだし。
それにお見合いの間じゅうびくびくしてて、
小動物みたいでなんだか可愛かったよ」
……か、可愛いかった?
出会ったばかりでこんなことが言えてしまうなんて、
大人の男のひとって恐ろしい!