勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
「でも、そうかもな。



経営には興味あるよ、純粋に面白いと思う」




「それなら、九条さんは幸せ者ですね。



九条家に生まれて、



その力を思う存分ためすことができるんだから」




すると、



ふわりと九条さんの柔らかな眼差しに包まれて、



笑顔を返す。




「そうだな、彩梅に言われるとそう思えてくる。



かっこつけたり、ぐちゃぐちゃ悩んでる自分が



馬鹿らしくなってくるよ」




「やっぱりカッコつけてたんですね!」




「そうだよ? 悪いか?」




「悪くはないけど、……ちょっと、近いです」




すぐ目の前に立つ九条さんの両手が私の腰を抱えていて、



芝生に落ちるふたりの影はひとつになっている。




心臓が、ものすごく、痛い。



< 155 / 250 >

この作品をシェア

pagetop