勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
九条さんのお家の書斎をお借りして、



二人並んで教科書を開く。




「どこがわからない?」




私のノートをのぞきこむ九条さんの肩がふれて、



袖が擦れる。




こ、これは、失敗したかも。




すごく嬉しいけど、



ドキドキしすぎて全く集中できない!




「聞いてる?」




「は、はいっ」




って、こんなの絶対に無理っ! 



勉強なんて、出来ないよ!




だって、首をかしげて英文に視線を走らせる



九条さんの横顔を見ているだけで、



心臓が飛び跳ねて、頬っぺたが熱くなる。




「どうした?」



「い、いえ。あの、九条さんも、



家庭教師のバイトとかするんですか?」




「いや、俺は教えるのあんまり得意じゃないから、



カテキョのバイトはしたことないよ。彩梅だけ特別」




私……だけ?




その一言に、一気に脈拍は急上昇! 



もう顔から湯気がでそうっ。




「彩梅、落ち着いて。集中して」




「は、はいっ!」




いけない、いけない。



せっかく九条さんが時間をとって



教えてくれてるんだから!




ノートに日本語訳を書き並べ、



課題の英作文を終えたところで、



ふうっと息をつく。




「あ……」




机に片肘つきながら、



九条さんがうとうと眠っている。



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