勝手に決められた許婚なのに、なぜか溺愛されています。
【九条side】その2。
「千里、ちょっと待ってよ」
高坂の甲高い声が響いて、
琉人が顔をしかめる。
「すげえな、あいつ、アメーバーだな。
もはやホラー映画なみの逞しさ」
「知るか」
高坂を振り切って、
琉人の隣に座るとすぐに資料に目を通す。
「そういえば、千里、
今度の経営セミナーに出席するんだってな。
親父さん絡みのセミナーなんて、
いつもなら絶対に参加しないのに」
「細かいこと気にしてる余裕なんてねえんだよ」
「最近、本格的に親父さんの会社も手伝いはじめたんだろ?」
「ああ」
すると、琉人がにやりと口の端を上げる。
……こいつ、全部分かってて聞いてるよな。
可愛い顔してんのに、ホントいい性格してる。
「それって、彩梅ちゃんのためなんだろ?
うまくいってんだ?」
「相変わらず彩梅がバカすぎて、目が離せない」
「くくっ、つまり、可愛くて手放せないってことだろ」
「そんなこと、一言も言ってない」
「お前の恋心を翻訳してやったんだよ。
ま、たしかに危なっかしいよな。
でも、可愛いじゃん。
つうか、あの子なら見合いなんてしなくても、
すぐに彼氏できそうだけどな」
楽しそうに笑う琉人をじっと見つめる。
「……お前、やけに彩梅のこと気に入ってるよな?」
「俺にまで牙むくなよ。余裕ねえな。
いつものクールな千里はどこに行ったんだよ?」
「うるせ」
「あのさ、マジで気に入ってるなら、
さっさと婚約なり入籍なりしちゃったほうがいいんじゃね」
「は?」
「あの子さ、あと数年もしたら奪い合いだぜ。
お家教育も行き届いてるし、
育ちの良さも見た目も極上ものだし」
「変な言い方するなよ。
彩梅なんて、まだまだガキだろ。
ぼんやりしてて、危なっかしくて目が離せないだけだよ」
「そんな余裕かましてると、彩梅ちゃん奪われちゃうかもよー」
「バカらしい」
面白半分で冷やかしてくる琉人に呆れて、別の資料を手にとった。
高坂の甲高い声が響いて、
琉人が顔をしかめる。
「すげえな、あいつ、アメーバーだな。
もはやホラー映画なみの逞しさ」
「知るか」
高坂を振り切って、
琉人の隣に座るとすぐに資料に目を通す。
「そういえば、千里、
今度の経営セミナーに出席するんだってな。
親父さん絡みのセミナーなんて、
いつもなら絶対に参加しないのに」
「細かいこと気にしてる余裕なんてねえんだよ」
「最近、本格的に親父さんの会社も手伝いはじめたんだろ?」
「ああ」
すると、琉人がにやりと口の端を上げる。
……こいつ、全部分かってて聞いてるよな。
可愛い顔してんのに、ホントいい性格してる。
「それって、彩梅ちゃんのためなんだろ?
うまくいってんだ?」
「相変わらず彩梅がバカすぎて、目が離せない」
「くくっ、つまり、可愛くて手放せないってことだろ」
「そんなこと、一言も言ってない」
「お前の恋心を翻訳してやったんだよ。
ま、たしかに危なっかしいよな。
でも、可愛いじゃん。
つうか、あの子なら見合いなんてしなくても、
すぐに彼氏できそうだけどな」
楽しそうに笑う琉人をじっと見つめる。
「……お前、やけに彩梅のこと気に入ってるよな?」
「俺にまで牙むくなよ。余裕ねえな。
いつものクールな千里はどこに行ったんだよ?」
「うるせ」
「あのさ、マジで気に入ってるなら、
さっさと婚約なり入籍なりしちゃったほうがいいんじゃね」
「は?」
「あの子さ、あと数年もしたら奪い合いだぜ。
お家教育も行き届いてるし、
育ちの良さも見た目も極上ものだし」
「変な言い方するなよ。
彩梅なんて、まだまだガキだろ。
ぼんやりしてて、危なっかしくて目が離せないだけだよ」
「そんな余裕かましてると、彩梅ちゃん奪われちゃうかもよー」
「バカらしい」
面白半分で冷やかしてくる琉人に呆れて、別の資料を手にとった。